モラルハラスメントとは?
「モラルハラスメント」という言葉をご存知でしょうか?「ハラスメント=嫌がらせ」と訳されます。
職場などではセクシャル・ハラスメント、パワーハラスメントという言葉は、現在では一般的にものになりました。
しかし、「モラル・ハラスメント」という言葉は、まだ理解されにくいといえます。
モラル・ハラスメントとは?
モラル・ハラスメントは、言葉や態度による精神的な嫌がらせを指します。人格的に問題のある人が、ゆがんだ自己愛を充足させようと、家族や同僚を貶め(おとしめ)非難する行為を繰り返し、相手の心を支配する行為をいいます。一種の精神的虐待ともいえます。
DV防止法でいう精神的虐待には、このモラル・ハラスメントの事例が多く含まれています。
身体的暴力のような証拠がなく外からは理解しにくいため、単なる亭主関白やカカア天下のように見えることもあります。
また、加害者は周囲にはいい夫(妻)のように見えるので、他人に相談しても「非難される被害者にも落ち度がある」といわれることさえあります。
うつ状態やPTSDを引き起こす可能性
言葉や態度で繰り返し示される「お前はダメだ、ここが悪い」というメッセージは、被害者の心にダメージを与えて自尊心を傷つけます。
そして加害者の判断に従うしかない状況になり、ときにはうつ状態やPTSDを引き起こすこともあります。何より被害者自身が、その異常な状況に対し、精神的な虐待を受けていると認識できなくなることが問題です。
加害者は「相手の事を思って注意している」「自分が正しい」と信じ、どんな問題が起きても「こうなったのは相手が悪い」と思い込みます。
本人には虐待という意識はないため、カウンセリングでも状態が改善されることは厳しいといわれています。
モラル・ハラスメントの線引きは難しい
モラル・ハラスメントのさらに複雑な点は、相手が「口うるさい」のか「人格的に問題があるか」のか、線引きが難しいところにあります。
単に「口うるさい」だけの言動に対しても、モラル・ハラスメントと非難するケースがないとはいえません。
いずれにしても、一方が心に深い傷を負って離婚を決意した場合、夫婦関係を修復するのは難しいでしょう。
モラル・ハラスメントを理由に離婚はできる?
それでは、モラハラを理由として、離婚することはできるのでしょうか?離婚できる場合とできない場合に分けて、ご説明いたします。
離婚できる場合
まず、相手の同意があれば、モラル・ハラスメントで離婚することができます。協議離婚や調停離婚の場合、お互いが離婚を了承していれば、基本的に離婚できるからです。
同意が無い場合には、法律上の離婚原因」にあたる「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となります(民法770条1項5号)。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。
離婚できない場合
離婚できない場合は、相手が離婚に同意しておらず、モラル・ハラスメントの程度が低い場合や証拠がない場合です。
相手が離婚に同意していない以上、協議離婚や調停離婚はできません。裁判では証拠があることしか認められないので、モラル・ハラスメントの証拠がなかったら、裁判官は離婚を認めてくれません。
そこで、モラル・ハラスメントを理由に離婚したいなら、きっちり証拠を集めておくことが非常に重要となります。
客観的な証拠を収集
裁判で離婚を認めてもらうためには「婚姻を継続し難い重大な事由」があることを示さなければなりません。つまり、モラル・ハラスメントが繰り返されていることがわかる客観的な証拠が必要になります。
モラハラを証明するために必要な例をいくつか紹介いたします。
モラハラ証拠①暴言の録音
日常的に暴言を言われているようでしたら、暴言の録音が有効です。
ボイスレコーダーを使う他に、携帯電話(スマホ・iPhone)の機能で簡単に録音することができます。
モラハラ証拠②LINE、SNSのスクリーンショット
文章で精神的な暴力を受けている場合は、相手とやり取りしたLINEなどのスクリーンショットを保存しておくと、これらも証拠として活用できます。
モラハラ証拠③医師の診断書
モラハラが原因でうつ病やPTSDなどの精神疾患を患った場合は、モラハラとの因果関係が証明できる医師の診断書が証拠になり得ます。
モラハラ証拠④メモ
モラハラを受けた日時、そのときの状況や相手の言動、自身の心境などをメモや日記に可能な限り詳細に残しておくことで証拠として認められる可能性があります。
以上のように、モラル・ハラスメントは肉体的な暴力と違い、傷が残るわけではないため、証拠集めは簡単ではありません。
ご自身を守るためにも、可能な限り相手に受けた言葉を「録音」する、または、「メモ」を残すといった証拠集めが重要となります。